談合やカルテルなどを監視する公正取引委員会に、機密扱いとなっている一台のファクス機がある。見た目は、どこにでもあるような複合機。だが与えられた任務は特別で、職員からは愛着を込めて「ゲンメン君」と呼ばれている。
日比谷公園に面した東京・霞が関のビル。会議室がならぶ人通りの少ないフロアの一室に、ゲンメン君はいる。詳細な仕様は機密とされるが、庁舎が停電しても一定時間は稼働し続けられるようにした特注品。触れることができる職員も限られている。
２００６年の独占禁止法改正で、不正の「自首」を促す制度が導入された。談合やカルテルは、ライバル同士での競争を避けるために複数の企業によって行われる。そのメンバーの一部に自首をさせられれば、グループ全体を摘発できる。自首のご褒美として与えられるのが、課徴金の「減免（ゲンメン）」だ。
自首の順位を正確に記録する。それが、ゲンメン君に与えられた特別任務。減免の割合は、自首した順番が早いほど大きくなるからだ。
たとえば、現在の制度では最大５社まで、早い順に１００～３０％の減免を受けることができる。全額免除された１社を除く８社に対して過去最高の計約４００億円の課徴金納付命令が出された談合事件では、５０～３０％の減免で課徴金が約１０億～５０億円減った。逆にこの５社に入れなければ、減免の恩恵は受けられない。
ゲンメン君は、この制度を運用するために設置された唯一の窓口だ。インターネット全盛の今、なぜファクスなのか。
制度導入に際し、どうしたら申…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル